映画と現場 備忘録

しゅ〜かつの逃げ場

『21世紀の女の子』



女の子は脆くて危うくて
儚く、今にも壊れそうで
グラグラしていてめんどくさい。


それでもキラキラしているもの。
そう見えるもの。


大森靖子が肯定してくれる「あなたは特別」
わたしも21世紀の女の子でした。









観る人によって刺さるもの刺さらないものが違うのだと思う。どの物語を、女の子を特別に感じるか。何を思い、誰を想うかも。




『ミューズ』

主人公の石橋静河さんと言えば私の中でコンテンポラリーダンス。『うつくしいひと サバ?』で心を奪われました。今作も少しだけ踊るような部分があってドキドキした。

主人公が恋をしていたと気付いたのは最後だったけれど、彼女を見つめる目の愛情深さは、友情より恋愛に近いように見えました。



『Mirror』

他の作品にもカメラがたくさん登場するけれど、撮ると撮られるを通して、「こうありたい自分」と「社会から求められる自分」について考えさせられたのは新鮮でした。

パンフレットの竹内里紗監督の言葉が就活中の身に突き刺さる。他者や社会からの視線がわたしは怖いから。「自分らしく」とは残酷な言葉だなぁと思います。



『out of fashion』

モトーラ世理奈の唯一無二の存在感にどうしようもなく惹かれてしまう。縷縷夢兎のお洋服もとても素敵。

モトちゃん演じる主人公が憧れていた先輩がつまらない男になっていた、と。

好きだった人がMHL.のトートを使い出したことを思い出しました。決してそれが悪いわけではないけれど、わたしの中でその瞬間、彼は特別でなくなってしまった。

女の子が夢を持つこと、この物語だとデザイナーになることは、今でもやはり男の子より難しいのかな。結婚や出産を普通だと考えない社会になっているようには思うけど、そんな社会が誰かの夢を潰すのなら、そんなに悲しいことはない。主人公は夢みる女の子の現実も希望もみせてくれました。



『回転てん子とどりーむ母ちゃん』

フライヤーをもらった時からどんなお話なんだ? と思っていました。想像を超えたカオス空間。刺激的でした。

山中瑶子監督の言葉、「大人になるにつれての日々はちょっとずつしんどい」あなたに言われるともっとしんどいよ、監督とわたしは同い年だから。知ったものかって思うだろうけど。「あなたはいつか考えるのをやめてしまうの?」やめないと思います。わたしにもなりたいわたしが一応あって、それを考えるのをやめてしまったらわたしが可哀想だから。



『恋愛乾燥剤』

山田杏奈ちゃんを透明感の暴力と称した『ミスミソウ』の内藤監督に脱帽。透明感は彼女のためにある言葉。ケイスケカンダの制服がま〜最高。

枝優花監督の撮る自然光が好きです。クリームソーダじゃないけれど、ピンクだからなんだろ…あのシーンは『少女邂逅』をふと思い出しました。

人を好きになるということは、好きでない部分も見てしまう。ピークはきっと好きになった瞬間。もう昔みたいに本能的に、何も考えずに人を好きになることなんてできないのだろうなと思いました。



『projection』

主人公は1人でカフェにいて、映画を観るような女の子。わたしじゃん、と思う人も多かったんじゃないのかな。

わたしの知らなかった伊藤沙莉ちゃんの新しい一面が詰まっていました。ヌードもそうだけれど、弱くも強くもあるまなざしだったり、少しずつ心を開いていく流れだったり。本当に魅力的な女の子。



『I wanna be your cat』

脚本家の主人公が男に向けた言葉「だってこの映画撮ったら女優のこと好きになるでしょ!?」痛い、苦しいと思いました。創作経験は無いけれど、主人公の気持ちは分かるような気がして。失望されたくない相手がいると人は強くも弱くもなってしまうのだと思います。



『珊瑚樹』

タイトルの表す珊瑚樹とは何ぞや。調べました。初夏にたくさんの小さな白い花を開花させ、夏から秋にかけて赤く美しい楕円形の果実をつけるらしい。それを宝石サンゴに例えたのだと。それは熟すと藍黒色になる。

性同一障害の人物と、彼を好きになる少女たちの三角関係。彼女たちは外から見るととても美しいけれど、内側の心は真っ暗なのかもしれない。それでもまっすぐに「好き」をぶつける彼女たちはやっぱり美しくて、羨ましいと感じました。



『愛はどこにも消えない』

橋本愛に全世界が恋。恋する女の子を演じるあなたはどこまでも無敵です。あと曲が好きなバンドのボーカル(というか友達の先輩)でびっくりしました。ムツさんいつの間にこんなビッグになったの?

好きな人に好かれなくなっても、好きな人を好きでなくなっても、好きだったことやその時間は消えないし無駄じゃない。愛されていたことも消えない。女の子でなくてもこの物語に肯定された方はたくさんいるんじゃないのかな。

主人公の好きなヒロトくん、あまりにもサブカル女(わたし)が好きそうな男の子でふふっ、となりました。この映画に登場する男の子はそんな子が多くて、わたしもやはり21世紀の女の子なんだなと。



『君のシーツ』

1番衝撃を受けた。言葉で上手く伝えられないのがもどかしいです。

主人公は女性だけど、夢の中で男性となり、清水くるみちゃんとキスしたりセックスしたりする。水田さんに兄者〜と言ってるくるみちゃんのイメージが強くて少し気恥ずかしい気持ちでした。



『セフレとセックスレス

ラブホテルの浴槽に収まる2人の男女、という構図の画像をインスタでみて可愛いなぁと思っていました。

物語の2人もすごく可愛い。セフレという関係はきっとある1つの関係だけを意味するのではなく、2人には2人のセフレや恋人という関係があるのだろうなぁと思いました。2人がお互いにずるいなぁというラストがずるいです。



『reborn』

ちょっとあまりにも横顔が尾崎世界観でびっくりしました。ここにもサブカル女が食いつく男の子が…

わたしは自分を確かに女で、好きになるのは男だと思っているけれど、別にそれは普通でも特別でもない。1つの形。主人公はグラグラしているように見えるけど、ちゃんと芯もある女の子なのだと思いました。松井玲奈さんって強さのイメージがあったけど、アンニュイな雰囲気も合うんだなぁ…



『粘膜』

待ってました、細田善彦さん。好きなんです。どんな人物を、どんな女の子を想う、または想われる男性を演じるのだろうと楽しみにしていました。

主人公はセックスが好きだけど本当の愛を持っていない女の子。もう1人は誰かに大切にされたいけどセックスできない女の子。後者の女の子は恋人の足の指の毛の数を数える。それを知っているのはこの世界でわたしだけと考えると、それだけで生きていけると言う。

この人にとって世界でたった1人の特別になりたいと思っても、全員がそうはなれない。それでもやはり愛し合った事実は消えないとわたしは思います。



『離ればなれの花々へ』

詩なのか、音楽なのか、3人の女の子が紡ぐ言葉は単純なようで難しい。唐田えりかちゃんのかもし出す生活感のようなものが前から好きでした。儚く消えてしまいそうな彼女の魅力をまた観ることができて嬉しい。

わたしには結婚願望も出産願望も今のところ無いけれど、3人の娘を産んで育てた母親を本当に尊敬しています。母でなくても、妻でなくても、彼女じゃなくても、女の子として生きていいと肯定されたように感じました。



『エンドロールアニメーション』

実は財布に現金が173円しかなくて、パンフレットはまた後日にしようと思っていました。エンドロールの最後、映画館の座席を立つ女の子が持つ本の表紙が『21世紀の女の子』で、やっぱり買って帰ろうとクレカで支払いました。パンフレットであり写真集、たくさんの女の子について描かれ、書かれたパンフレットは今後何度も読み直すことになると思います。

大森靖子が歌う「少女のままで死ぬ」いつまでも夢をみていたい。居心地のいい場所に居続けたい。恋愛は片想いがいちばん楽しい。大人になんてなりたくはない。それでもいいと、そのままでもいいと、全てを肯定してくれるようにわたしは感じました。素敵なエンドロール。




洋服が好きな人。可愛い女の子が好きな人。女の子である自分を好きな人、あるいは嫌いな人。色々な方がこの映画を観るのだろうなと思います。多くの方に届きますように。